通貨戦国時代 円高が続く本当の理由
「通貨戦国時代 円高が続く本当の理由」を読了しました。
私は、投資信託を通じて海外の資産にも投資していますので、通貨を含めた為替の仕組みを知りたいと思い、本書を手に取りました。
為替はまったく未知の世界でしたが、本書は理解しやすく書かれており、とても勉強になりました。
総論として、為替の世界では、各国の通貨をアメリカのドルと交換するための取引が圧倒的に多いため、米ドルの動向が為替全体の動向を左右します。
また、為替の取引では、一方の通貨が高くなると、他方の通貨は必ず安くなります。
そして、アメリカ政府は、国内の景気回復を目的として、輸出を増加させる方針を打ち出しており、アメリカの輸出にとって好都合な米ドル安・他通貨高へと誘導しています。
無論、日本を含むほとんどの国が、同じ論理で輸出を増加させたいため、自国の通貨安を望んでいます。
しかし、一国で金融緩和政策を打ち出したり、市場介入のような強硬手段を取ったりしても、米ドルの規模には太刀打ちできず、自国の通貨安は長続きしません。
したがって、アメリカが米ドル高を望まない限り、米ドル安・他通貨高の傾向は避けられないようです。
昨今は、中国の人民元が国際通貨としての存在感を増しつつありますが、人民元高は当局が強く抑制しており、他国の通貨とは様相が異なっています。
そして、日本の円は、"安全な通貨"としての地位は築いているものの、取引規模から見て、国際通貨としての存在感は薄いため、ドル安・円高の流れは今後も続くだろうと、著者は見立てています。
「通貨戦国時代」とタイトルにある通り、各国は、通貨を巡って戦争状態にあります。
為替の歪みは、"通貨危機"として幾度となく表面化しています。通貨の世界でも、歴史は繰り返されます。
そして、未だ尾を引く欧州の債務問題も、端的に言えばユーロに内在する問題です。
金融システムの根幹をなす為替は、"通貨の戦争"によって常に絶妙なバランスを保たなければ成り立たないのだと、思い知らされました。
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