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インデックスファンドの配当込み・除くベンチマークを私なりに考察する

ベンチマークとの乖離のイメージ

最近、投資ブロガーの方々が思いの丈を述べている、配当除くインデックスをベンチマークとしているインデックスファンドについて、私なりに考察し、結論と今後の投資方針をまとめました。

当初、この問題は、「不誠実」という倫理的な側面が主な批判の対象となっており、正直なところ、私はあまり気にしていませんでした。

私の投資方針書では、第22版より、国内株式のベンチマークをTOPIX(配当除く)からTOPIX(配当含む)へと変更しており、インデックスファンドが配当込み・除くのどちらであっても、私自身のポートフォリオ分析においては、配当込みの成績を見ることになるため、結果として特に不都合が生じないからです。

しかし、この問題がどうも頭の片隅に引っかかって気になり始めました。ポートフォリオ分析では不都合がなくても、何か別の問題がないかという点で安心できなかったからです。

また、投資ブロガーの方々の論点も次第に精細さを増し、単に倫理的な側面だけでなく、配当要因の乖離が適切な範囲内なのか、すなわちトラッキングエラーが妥当か否かの判断がつかない、あるいは、そもそもトラッキングエラーの要因を生じさせてはいけないのではないかという、客観的に見て至極真っ当な批判も展開されるようになりました。

ここに来て、コツコツ投資家の端くれとして、この件を真剣に考え、一定の結論を出した上で投資行動を決めようという気持ちが生まれました。

現状を調べてみると

そこで、この議論の対象をTOPIXに絞った上で、Googleで「TOPIX マザーファンド」をキーワード検索し、上位約100件分のTOPIX連動マザーファンドを調べたところ、配当込みと明記しているマザーファンドは、以下の4件だけでした。

  • 年金日本株式マザーファンド(大和住銀
  • ステート・ストリート日本株式インデックス・マザーファンド(ステート・ストリート
  • 日本株式インデックス・マザーファンド(三井住友AM
  • 国内株式パッシブ・ファンド(最適化法)・マザーファンド(DIAM

また、上位100件には載りませんでしたが、投資ブロガーの方々の情報より、以下の1件も配当込みと明記していることを確認しました。

これら5件のマザーファンドに対応するベビーファンドが、全部でどれだけ存在するのかは調べていませんが、おそらく、ベビーファンドも当然に、配当込みをベンチマークにしているものと考えられます。

一方、マザーファンドが配当除くをベンチマークにしていれば、こちらのベビーファンドも当然に、配当除くをベンチマークにしているものと考えられます。

実際、低コストのインデックスファンド・シリーズを展開している各社のTOPIX連動インデックスファンドは、マザーファンド・ベビーファンドともに配当除くをベンチマークとしています。

どうしてこうなった?

では、なぜ多数のマザーファンドが、配当除くをベンチマークとしているのでしょうか。その根拠となり得そうなところを調べながら、列挙してみます。

  • 日本取引所グループマーケットニュースなどによると、配当込みTOPIXの算出は1999年2月1日に始まっている(税引後配当込みTOPIXという指数も2013年9月2日より算出を開始している)ようです。算出開始時期は十分に古いことから、マザーファンドの設定時期を考慮しても、配当込みTOPIXをベンチマークとすることに、何ら問題はないと考えられます。
  • Yahoo!ファイナンスで、ともに三井住友TAMが運用するベビーファンドの日本株式インデックスe(配当込み・青い線)とSMT TOPIXインデックス・オープン(配当除く・赤い線)を比較すると、両者の基準価額の騰落率は、ほぼ等しいか、むしろ配当除く(赤い線)のほうが配当込み(青い線)よりも上方乖離しているように見えます。どちらが配当込みTOPIXに忠実なのかまでは判断できませんが、配当込みと配当除くのどちらを選択しても、運用成績にはほとんど影響がないと考えられます。
  • そのため、マザーファンドの設定時に、どちらをベンチマークとするか、運用会社(設定者)が特にこだわっていない可能性が考えられます。また、運用会社によっては、配当込みTOPIXの指数の入手コストを削減するため、あえてTOPIXを選択している可能性や、販売会社の売り出しの都合上、呼び名としての通りが悪い配当込みTOPIXよりもTOPIXを好んで選択している可能性も考えられます(これが、買い込む個人投資家側の都合を蔑ろにしているという批判にあたります)。
  • 指数の入手のしやすさの面では、TOPIXはマスコミでも日常的に扱うほど公知の指数となっていますが、配当込みTOPIXは、そこまでの地位を獲得していません。そのため、個人投資家にとっては、入手しやすいTOPIXと比較できるほうが手軽だと考えられます。これは、ETFの取引を行う上で、特に重要な要素になり得ます。
  • インデックスファンドの日々の騰落率に着目すると、TOPIXと配当込みTOPIXの乖離は、誤差レベルにまで縮小すると考えられます。一方、中長期的な騰落率に着目すると、インデックスファンドの騰落率と配当込みTOPIXは、TOPIXよりも上方乖離するため、個人投資家に「成績が良い」という予断を与えかねません(実際には、ベンチマークに連動しているほど成績が良いですし、これが倫理的な側面での批判にあたります)。

あくまで、思いつく限りではありますが、列挙してみました。

これは余談ですが、インデックスeシリーズとSMTインデックスシリーズのマザーファンド併合の希望について、ちょうど先日触れたばかりですが、配当込み・除くの両マザーファンドを併合するのは、極めてハードルが高いかもしれませんね。

私なりの結論を出す

さて、列挙したものを眺めてみますと、恣意的にTOPIXを選択していると想像されるものよりも、実務面で配当込みTOPIXを選択しにくい、または選択そのものをしていないと想像されるもののほうが多く挙がりました。

したがって、私の感性では、倫理的な側面での批判は、少し的外れのような気がしています。

ただし、いずれも推測の域を出ないものであり、これらの要因が複合している可能性も考えられます。

そこで、私の中での結論は、運用会社は特に悪気もなくTOPIXを選択した一方、急速にレベルアップした個人投資家の配当込みTOPIXという要求に応え切れなくなっているという過渡期に差し掛かっているのではないか、と考えることにしました。

変な先入観や思い込み、感情を込めても、投資行動に反映する上では適切でないと判断したからです。

そうは言っても

一方、コツコツ投資ならぬインデックス投資を実践する上では、トラッキングエラーの問題は簡単に片づけられません。

これまで、運用報告書の「乖離は配当要因によるもの」というワードを見過ごしてきましたが、TOPIXと配当込みTOPIXとの乖離率は2%を超えることもあり、いざ指摘されてみると、安易に容認して良いものではありませんよね。

とはいえ、実際問題として、配当込みTOPIX連動型で低コストなインデックスファンドとなると、先述の日本株式インデックスeくらいしか見当たりません。

インデックスeシリーズを保有している私としては嬉しいですが、そういう問題でもありません。

妥協案として、マザーファンドのベンチマークはTOPIXを維持しつつ、ベビーファンドのベンチマークを配当込みTOPIXで引き直すのは、運用会社の努力次第で実現できそうに思えます。

もっとも、既存のインデックスファンドに適用するのは難しいかもしれませんが、今後の運用会社の出方に注目したいところです。

国内株式インデックスについては現状維持

以上のことと、現在置かれている環境を踏まえ、私の投資行動は、現状を維持することにしました。

というのも、スナップショットをご覧いただくと分かりますが、国内株式のアセットクラスは、現時点でTOPIX連動型ETFのMAXIS トピックス上場投信と個別株のみを保有しており、当面は、機会があればこのETFをNISA口座で買い増したいと考えています。

つまり、国内株式インデックスファンドを買い付ける予定がないことと、配当込みTOPIX連動型ETFが存在しないことの2点により、トラッキングエラーの問題を回避する手段がないためです。

今のところ、MAXIS トピックス上場投信の信託報酬率に満足しているため、トラッキングエラーと天秤にかけても、投資行動を変えるまでのインパクトがないというのが、正直なところです。

まだ検討と工夫の余地がある

一方、議論の対象をTOPIXから他のベンチマークまで広げると、まだまだ工夫できそうなところがあります。

しかし、保有しているインデックスファンドのほとんどが大きな含み益を抱えており、簡単に売り付けられない事情を抱えているため、今後買い付ける分は、可能な限り、配当込み指数連動型インデックスファンドに切り替えるという、消極的な対策しか打てないのが実情です。

いずれにせよ、各アセットクラスについて、もう少し丁寧に調べてから、投資方針書に反映にしようと考えています。

おそらく、読者の皆様の置かれている環境によって、投資行動を変える・変えない、あるいは変えられる・変えられないに結論が分かれると思いますし、投資環境の変化に応じて、嫌でも変えざるを得ないかもしれません。

ただ、結論がどうであれ、受益者としてこのような問題に声を上げることは、運用会社にとっても、より良い商品開発のために必要なフィードバックとなるに違いありません。

また、この問題が、自身の投資行動を見つめ直す一つの契機になれば、それだけでも価値があることだと、個人的には考えています。

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