投資信託の監査報告書はどうなっているのか

2015年の最大の企業不祥事を挙げるならば、東芝の粉飾決算でしょう。
その総額は3,000億円とも9,000億円とも噂されていますが、未だ確報は伝えられていないようです。
2015年12月21日付で10,600人の人員整理を含む大規模なリストラ策を発表したことなどを受け、2015年12月22日の東芝の株価は、前日比で12.3%もの下落を記録しました。
また、2015年12月22日付プレスリリースによると、会計監査人の新日本有限責任監査法人が、次年度の監査契約を辞退すると発表しています。
東芝のコーポレートガバナンスに重大な欠陥があったと同時に、新日本有限責任監査法人がその職責を果たしていなかったことも明らかとなり、監査法人として初の課徴金命令が下されました。
投資信託も監査報酬を徴収されているが
読者の皆様は、投資信託のコストに関心を寄せていらっしゃることと思いますが、その1つに監査報酬があります。
投資信託協会の2008年7月16日発行メールマガジンでは、監査報酬を以下のように説明しています。
監査報酬は、投資信託を監査するために必要な費用のことです。
監査は、投資信託ごとに受ける必要があり、監査を受けるために必要な公認会計士や監査法人に支払う報酬は信託財産から支払われます。
投資家が間接的にこの費用を負担していますが、投資信託の計理が正確に行われているのか、第三者である監査人が監査することにより、投資信託の公正性・透明性の確保にもつながっています。
そして、監査報告書の確認方法については、以下のように説明しています。
投資信託は、計算期間終了後に、監査を受けなくてはならない財務諸表などが記載された「有価証券報告書」を作成し、監査を受けた証明として「監査報告書」を添付したうえで財務局に提出します。
有価証券報告書は財務局に提出されますが、金融庁が運営する「EDINET」というサイトに掲載されるので、インターネットを介して投資信託の有価証券報告書と添付された監査報告書を誰でも閲覧することができます。
運用報告書に添付されていないのはおかしい
確かに、EDINETの有価証券報告書には、監査報告書が添付されています。ところが、多くの方が目にするであろう運用報告書には、全体版であっても、監査報告書が添付されていません。
一方、個別株をお持ちの方はご存知だと思いますが、株主総会招集通知にはほぼ必ず、監査報告書の記載があります。
先述の通り、投資信託の監査報酬は投資家が支払っています。その対価として監査報告書を受け取るのは、当然の権利のはずです。
にもかかわらず、現状は、投資家自身がEDINETで探さなければ、内容を知ることができません。これは、道理として少しおかしいように思えます。
(追記)「請求目論見書には監査報告書が添付されている」「監査に引っ張られて運用報告書の開示が遅れると本末転倒になりかねない」とのご指摘をいただきました。感謝の意を込めて追記します。
投資信託業界の取り組み
ところで、投資信託業界では、かねてより、目論見書が投資家にとって読みやすく分かりやすい内容となるように、検討を重ねていました。
その成果として、2010年7月より交付目論見書の定型化と記載の簡素化が実施されました。
従来の目論見書は100ページを超えることも珍しくありませんでしたが、最近の交付目論見書は10ページ程度に収まるものが多いようです。
同様に、2014年12月より交付運用報告書の定型化と記載の簡素化が実施されました。
そして、詳細な情報を知りたい投資家は、請求目論見書や運用報告書(全体版)を参照するという、現在の2段構えの仕組みが完成しました。
ディスクロージャーの簡素化とは別次元の問題
このようなディスクロージャーの簡素化は、投資家の利益に繋がるため、歓迎すべきことです。しかし、監査報告書を添付するか否かは、それとは別次元の問題だと私は考えます。
東芝のような企業でさえ粉飾決算に手を出したのですから、もしかすると、投資信託にも不適切な会計処理をしているものが紛れているかもしれません。
「投資信託は信託財産が保全されているから安心だ」と思っていても、監査が機能不全であれば、その安心は裏切られることになります。
したがって、少なくとも、運用報告書(全体版)に監査報告書を添付するか、または監査報告書を単体で適時開示すべきではないでしょうか。
そこから初めて、投資家が監査の品質などを問えるようになるのだと思います。
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