ロボットによる投資アドバイスは有用か

最近にわかに、ロボ・アドバイザーへの注目度が高まっています。
本ブログでも、みずほ銀行のポートフォリオ提案サービス「SMART FOLIO」をご紹介しました。既にお試しになった方もいらっしゃるでしょう。
さて、ロボ・アドバイザーの提案を、読者の皆様はどのように受け止めるでしょうか。
鵜呑みにする方はごく少数だと想像しますが、信じる・信じないの程度は、人それぞれかもしれません。
ロボ・アドバイザーは、参考程度に留めるのであれば有用かもしれませんが、売り手側に悪用されるという由々しき事態が発生しないか、私は危惧しています。
ロボット技術は進化を続けているが
コンピューターの世界における最先端の技術トレンドとして、「ビッグデータ」「機械学習」「ディープラーニング」といったキーワードが挙げられます。
膨大なデータを解析・蓄積し、自律的に仮説検証を繰り返すことで、人間には発見できない物事の特性や規則性などを探し出すというのが、それらの目標とするところです。
このような技術が、本来の目標に向かって正しく活用されるならば、何の問題もないでしょう。
しかし、売り手側が特定の金融商品へ誘導したい意向を持っていると仮定すると、技術は正しく活用されるでしょうか。
おそらく、買い手にとって最適でない提案をするであろうことは、読者の皆様においても想像に難くないと思います。
ロボットが公平中立とは限らない
先に挙げた最先端技術は、人間の介入する余地がほとんどないという点で、公平中立だと言えます。しかし、これを実現するには、今のところ莫大な時間とコストがかかります。
大企業でさえ導入の難しい最先端技術を、果たして、個人投資家に無料ないし廉価で開放するでしょうか。
つまり、現在の個人投資家向けロボ・アドバイザーは、コンピューターが売り手の意向に沿ってアドバイスしているに過ぎない、と考えるのが自然でしょう。
さらに端的に言えば、売り手の人間がコンピューターに置き換わっているだけです。したがって、提案を安易に信用するのは危険です。
善良なロボットを見極める
先述のSMART FOLIOは、自社系列のi-mizuhoインデックスシリーズのみを提案します。その点では公平さに欠けるかもしれませんが、いずれも低コストの投資信託であり、良心的だと言えます。
また、中立的な立場からの運用アドバイス
を謳っている通り、投資家の属性や、各アセットクラスのリスク・リターン特性のみを用いてアセットアロケーションを提案しているようです。私が試した限りでは、そこに作為的なものは感じませんでした。
したがって、SMART FOLIOは、善良なロボットだと考えて差し支えないでしょう。
一方、注意しなければならないのは、他のもので代替できないような特定の金融商品や、信託報酬率の高い投資信託ばかりを推奨するようなロボットです。
具体的には、太陽光発電など、投資対象として一般的でないものに投資する私募のファンド(のようなもの)が候補に挙がったり、投資方針の不明瞭なアクティブ運用の投資信託を勧めたりするのであれば、その提案は一切合切、検討に値しないでしょう。
投資判断は自己責任
残念ながら、「コンピューターの判断は常に正しい」と考える方が、世の中には一定数いらっしゃいます。
しかし、コンピューターは基本的に、人間の組み立てた論理に基づいてしか、高度な判断はできません。
不誠実なロボ・アドバイザーの提案に乗せられて損失を被らないためにも、安易にヒトやモノを頼ることなく、自分自身で熟慮しましょう。
投資家自身は何も考えなくて良い、などという上手い話はありません。どのような経緯で判断したにせよ、結果責任は負わなければなりません。
ロボ・アドバイザーが、投資家の「考える機会」を奪うことにならないよう、私はただただ祈るばかりです。
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