信託報酬率の内訳を知りたい
投資信託の信託報酬は、受益者の負担する保有コストであると同時に、運用会社の利益でもあります。
さらに、運用会社にとっては、儲けを左右する重要な数値であると同時に、会社の体質が表れるポイントでもありそうです。
例えば、がめつい会社ならば、受益者にとって不合理な信託報酬率を設定するかもしれません。
あるいは、社員に高額な報酬を支払っていれば、運用経費が高止まりし、より多くの信託報酬を必要とするかもしれません。
一方、運用資産の規模が十分に大きければ、その収益基盤を背景に信託報酬率を引き下げるという、受益者に寄り添う決断をするかもしれません。
とどのつまり、会社の内部事情が数値化されるわけですから、一般的に、それを大っぴらにしたいとは考えないでしょう。
裏を返すと、もし信託報酬率の内訳を知ることができれば、受益者にとって好ましい会社とそうでない会社が明確となるようにも思えます。
先例と呼べそうなものはある
保険業界では、ライフネット生命が2008年に、付加保険料率(利益)の開示に踏み切り、業界を震撼させました。
保険料の内訳を明示することで、商品の透明性を高めると同時に、新規顧客を呼び寄せる狙いもあったようですが、いずれにしても革新的な出来事でした。
この生命保険の(付加)保険料率と、投資信託の信託報酬率は、素人目にはまったく同じ構図のように見えます。
ですから、信託報酬率の内訳も、開示が不可能だとは言い切れないはずです。
信託報酬率は保有コストだけの問題ではない
信託報酬率の内訳が開示されれば、それが仮に割高だとしても、納得ずくで保有するかもしれません。
例えば、懇切丁寧な運用報告と引き換えに、相応の費用を負担するのは構わないと考える方もいらっしゃるでしょう。
また、昨今の超低コストインデックスファンドのように、ベンチマークとの高い連動性のみを求め、他には何も要らないという方もいらっしゃるでしょう。
つまり、保有コストの割安・割高感もさることながら、信託報酬率に見合ったサービスが提供されるか否か、そのサービスが必要か否かも、投資信託を選ぶ際の重要な観点となり得ます。
すなわち、受益者自身が合理的だと正しく判断できるのであれば、高い信託報酬率もまた正当化されるのです。
数値の競争は分かりやすくて嬉しいのですが、そろそろ、商品性の競争が始まっても良いように、私は感じています。
今後、このような情報の開示や、付随説明の充実も、フィデューシャリー・デューティーの一要素として認識されていくかもしれませんね。
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