「金融レポート」を読む(1)家計の金融・投資リテラシー
金融庁が2016年9月15日付で、金融レポートを公表しています。
早速確認してみると、興味深い内容が盛りだくさんでした。
そのため、本ブログで初のシリーズ記事として、このレポートに触れていきたいと思います。
取り上げるのは、「国民の安定的な資産形成に向けた課題と今後の対応策」(54ページ目以降)の章です。
本記事では、金融レポートの「家計の金融・投資リテラシー」(54ページ目以降)の節を追ってみます。
家計の金融・投資リテラシー
金融庁の現状認識として、投資等を通じて家計自ら資産形成を行っていくための金融・投資リテラシーの浸透に向けては、未だ対応の余地がある
と記しています。
金融庁が2016年初頭に行ったアンケート調査によると、投資未経験者の約8割が、有価証券への投資は資産形成のために必要ない
と回答しています。
別のアンケート調査によると、ライフプランを立てている回答者が20%未満であるのに対し、ライフプランを不要と考える回答者が40%弱おり、公的年金を生活の基盤だと考える回答者は約70%に上ったとのことです。
金融リテラシーの高い読者の皆様から見ると、非常に危うい状況だと思われることでしょう。
投資教育が叫ばれて久しい
さて、これらの結果より、金融庁としては、投資教育を2本立てで推進する意向のようです。
一方は、本人が行動を起こさなくとも投資教育を受けることができる外部的な環境の整備
と呼ぶものです。
具体的には、職場積立NISAや確定拠出年金などの制度と、それに付随する資料や説明会などを通じて、否が応でも投資に関わらざるを得ない環境を整備することだと考えられます。
他方は、学校教育の場における基礎知識の普及です。
金融の仕組みなどの「知識」の習得に偏重している現状から、家計管理や生活設計などの「習慣」や「能力」の習得も重視する方向へと、舵を切っていきたいようです。
実効性を伴わなければ意味がない
学校教育の場における投資教育の必要性と重要性については、これまでも度々議論がなされてきたものと認識しています。
しかし、半ば強制的に投資教育を受けさせる仕組み作りにまで踏み込んだものは、私は今まで目にしたことがありませんでした。
仮に現在、学校教育の場で投資教育が行われているとしても、社会全体では、投資教育を受けていない人が大多数です。そして、大多数をどのように手当てするのかは、非常に悩ましい問題です。
先のアンケート結果が示す通り、社会の大多数は、投資に興味・関心がないのですから、義務化したところで、知識が定着するはずもありません。
その解決方法として、制度側から攻めていこうという着想は、金融庁という行政機関だからこそ成し得る、実効的な対策なのかもしれません。
現状は、投資の普及までには程遠く、その前段で足踏みしている状況だとも言えます。
せっかく対策を検討しているのですから、願わくば、できるだけ早く講じて欲しいですね。
シリーズ記事の一覧
- 「金融レポート」を読む(1)家計の金融・投資リテラシー
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