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「金融レポート」を読む(4)貯蓄性保険商品やファンドラップの提供・販売/今後の課題と対応策

販売手数料等の比率推移とラップ口座の残高・件数のグラフのイメージ

金融庁が2016年9月15日付で、金融レポートを公表しています。

本記事では、金融レポートの「貯蓄性保険商品やファンドラップの提供・販売」(65ページ目以降)と「今後の課題と対応策」(70ページ目)の節を追ってみます。

貯蓄性保険商品やファンドラップの提供・販売

両金融商品について、金融庁は投資信託の窓口販売と同様の問題を抱えている可能性を認識しているようです。

銀行や証券会社においては、投資信託のほか、保険商品や仕組債等、類似のリスク特性を持った様々な金融商品を並べて販売している。

こうした中、足元では貯蓄性保険商品やファンドラップの提供・販売が増加していることから、これらの商品販売についても、(中略)顧客本位の商品提供、販売が行われているか、検証を行った。

これらの検証結果については、以下の通り、各項で詳しく見ていきます。

貯蓄性保険商品

金融庁が貯蓄性保険商品に注目したのは、販売会社の受け取る手数料が販売額以上に大きいとの事実からのようです。

銀行における金融商品別の手数料収益を見ると、販売額以上に、保険の占める比率が高く推移している。

この背景として、一時払い保険の販売手数料率が、投資信託等の金融商品と比べ、高めに設定されていることが挙げられる。

特に、外貨建一時払い保険の手数料は、複雑な仕組みの商品販売が増えていることもあり、年々上昇傾向にある。

さらに、商品の複雑なスキームを問題視していることが読み取れます。

インデックス投資家の視点で見た場合、貯蓄性保険商品は、投資対象としても保険としても適当でないことが、おおよそ判断できます。

金融商品は、複雑さを増すにつれてコストが高くなり、割に合わなくなることを理解しているからです。

商品特性

金融庁はとりわけ、外貨建て商品に対して懸念を強めていることが分かります。

貯蓄性保険商品の中でも、近年、運用を定額部分と変額部分に分けた一時払い外貨建保険の販売が伸びている。

内容が複雑なパッケージ型の商品となっている。

一方、このパッケージ商品を構成する外国債券と投資信託、(掛け捨ての)死亡保険を別々に購入・契約することでも、このパッケージ商品と同等の経済効果を得ることができる。

例えば、(中略)顧客の支払いコストを比べると、(中略)10年で10%程度低くなることがある。

今回の検証においては、金融機関代理店の中で、このような代替策を提案しているところは見られなかった。

まさに、「単純な商品を組み合わせるほうが低コストである」と言っており、金融商品の特性を鋭く突いています。

保険商品はそもそも、複雑な仕組みのものが大半であり、掛け捨てのシンプルな保険は、長らく見向きもされない状況が続いていました。

生命保険の予定利率が好条件であったなどの理由から、コストが高くても割に合っていた側面もあり、特に問題とは認識されていませんでした。

しかし、低金利下の現在、予定利率も大幅に引き下げられており、円建ての貯蓄性保険商品に、魅力はほとんどありません。

そのような背景から、保険会社も苦心して外貨建て商品を開発したのだろうとは思いますが、円建てと同様、魅力はほとんどありません。

しかし、かつての好条件を知っている投資家(契約者)ほど、その幻想に囚われて手を出しているのではないかと、私は想像します。

保険と聞くと、投資よりも堅実なイメージを受けますから、より心理的なハードルが低いのも、その一因となっているかもしれません。

いずれにせよ、保険が貯蓄に不向きであることは、投資家(契約者)も認識すべきでしょう。

保険会社から金融機関代理店への販売サポート

金融庁の分析は、保険業界の体質に問題があると捉えているように、私は感じます。

多くの保険会社が、金融機関代理店に対し、販売サポートとして、販売手数料の上乗せキャンペーンや募集人(販売員)向けのインセンティブ供与を幅広く実施している。

  • 販売手数料の上乗せキャンペーンについては、(中略)商品や期間を限定した上で、通常よりも0.5~1.5%程度上乗せした手数料を提示している。
  • 販売員向けのインセンティブについては、(中略)販売実績に応じて、(中略)食事会・研修旅行へ招待する事例も見られる。

こうした販売サポートは、(中略)付与競争の様相を呈しており、最終的に、顧客が支払う保険料を上昇させる要因の一つとなっている。

つまり、保険会社各社が、代理店に高額な見返りを与えるべく競争し、そのコストを投資家(契約者)に負担させているというのです。

保険会社にとっての顧客は、投資家(契約者)ではなく代理店だとも言えます。

金融庁が直接的にこれを言及しているわけではありませんが、かなり踏み込んだ分析だと評価すべきでしょう。

そして、これらの分析結果の裏を返せば、「直販でシンプルな保険商品を選ぶと低コストである」となります。

幸いなことに、そのような保険会社も保険商品も、続々と現れています。

投資家(契約者)は、投資と保険を分けて考えるという基本姿勢を崩すべきではないと、私は考えています。

ファンドラップ

ラップ口座は、金融機関に資産管理を任せるという意味では大変魅力的に映りますが、高コストの金融商品だとの指摘も多いのが実情です。

ファンドラップを提供する金融機関は、(中略)資産配分や商品選択、配分見直し等を行っており、その対価として、資産残高に応じて投資一任報酬を徴収している。

これ以外にファンドラップで運用する投資信託の信託報酬等がかかるため、投資家が支払う手数料は、主なファンドラップ商品の平均で、年間2.2%に達する。

一方、一般の投資信託の場合、初年度に平均3%程度の販売手数料がかかるものの、毎年支払う手数料(信託報酬等)は平均1.5%程度となっている。

これらの平均料率を使って、ファンドラップと一般の投資信託の保有コストを比較してみると、4年を超えて投資を継続する場合、ファンドラップの方が一般の投資信託よりも保有コストは高くなる計算となる。

投資家においては、(中略)ファンドラップの手数料が、提供されるサービスや運用成果の対価として適正であるか確認することが重要となっている。

本項においては、金融庁が投資家に対して、直々に警鐘を鳴らしているのが興味深いところです。

私はラップ口座を、優越感や安心感に対価を支払うものだと認識していましたが、どうやら正しい見立てだったようです。

運用対象とする投資信託

金融庁はさらに、運用商品の選定プロセスにも釘を刺しています。

ファンドラップを提供する金融機関は、各社とも、顧客よりも系列会社の利益を優先することがないように、運用対象の投資信託選定に際し、別途、外部より助言を受けているものの、当該助言会社も大半が系列会社となっている等、選定プロセスの透明化に向けた取組みはいまだ途上にある。

利益背反行為を許すわけにはいきませんから、これは監督官庁だからこその指摘かもしれません。

ただ、指摘するだけにとどまらず、金融庁が音頭を取ってこの問題に取り組むほうが、業界任せにするよりも効果的に思える点は、念のため付記しておきます。

今後の課題と対応策

金融庁は、以下の通り総括しています。

これまでに見たように、金融機関においては、短期的な利益を優先させるあまり、顧客の安定的な資産形成に資する業務運営が行われているとは必ずしも言えない状況にある。

また、顧客は金融機関が販売する商品のリスクがどこにあるかが分かりづらい、といった「情報の非対称性」も存在している。

2016年3月末時点の国内銀行のバランスシートを見てみると、(中略)足元の金利環境においては収益確保が困難な状況にある。

こうした状況の下では、顧客に対し適切に情報提供を行いつつ、良質な金融商品を販売することは銀行自身の安定性向上にもつながると考えられる。

金融庁としては、金融機関に対し、真に顧客のためになる行動をより一層促すために、金融審議会の場でフィデューシャリー・デューティーに関する議論を開始しており、今後、更に検討を深めていく。

昨今の金融庁は、一部の個人投資家の間で、大変にアグレッシブだと捉えられています。

これまでは、金融業界の利益保護を優先するような、どちらかと言えば後ろ向きの姿勢にさえ見えました。

しかし最近は、投資家の利益保護の姿勢を明確に打ち出しており、金融業界の問題を徹底的に洗い出すとともに、解決策を一つずつ導き出そうとしています。

それはあたかも、金融庁が業界全体に対して、フィデューシャリー・デューティーの考え方を浸透させるべく動いているように見えます。

金融は既にグローバル化しており、低レベルの国内競争に明け暮れているようでは、世界で通用しなくなってしまいます。

金融庁もおそらく、それを危惧しているのではないでしょうか。

早急に金融システムを再構築し、国際水準の競争力を確保しなければ、我が国の金融業界は生き残れません。

それは、一時的に大きな痛みを伴いますが、投資家の利益保護を将来の飛躍に繋げて欲しいと、強く願っています。

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