ファンド名称末尾の英字は何を意味するのか(1)三井住友・DC日本株式インデックスファンドS
三井住友AMが2016年9月23日付で、確定拠出(DC)年金向けファンド「三井住友・DC日本株式インデックスファンドS」を一般販売向けにも開放しています。
Twitterのタイムラインを眺めていたところ、堀田かつひこさんと大石隆史さんが、このファンドを話題にしていました。
- 堀田かつひこ(@jukucho7)さんのツイート
- 追加!三井住友・DC日本株式インデックスファンドSの評価解説|ノーロード投資信託ガイド http://noload.558110.info/MitsuiSumitomoDCNihonKabushikiIndexFundS.html ・・・日本株投信はこれで決まりというレベルです。ところで最後に付く「S」ってどういう意味だ?
- 大石隆史(@OisiTakasi1968)さんのツイート
- @jukucho7 配当込みTOPIXをベンチマークとする信託報酬最安の大本命がついに来ましたね。この日を長らく待っていましたので、私は既に完全乗換済です。「S」や「L」はDC系ファンドでたまに見かける気がしますが、意味は私もわかりませんでした( ̄▽ ̄)
私も、末尾の英字が何を意味するのか興味を抱き、調査したのですが、実に意外な展開となりました。
末尾に英字のつくファンドは4本
同社において、末尾に「S」のつくファンドは、設定日の古い順に、以下の4本です。なお、「S」以外の英字(「L」など)のつくファンドは、見当たりません。
名称 | 本記事内での略称 | 設定日 |
---|---|---|
三井住友・DC国内株式アクティブS | 国内株式アクティブS | 2001年10月4日 |
三井住友・DC外国株式インデックスファンドS | 外国株式インデックスS | 2004年11月30日 |
三井住友・DC外国債券インデックスファンドS | 外国債券インデックスS | 2004年11月30日 |
三井住友・DC日本株式インデックスファンドS | 日本株式インデックスS | 2011年12月9日 |
例えば、最も新しく設定された日本株式インデックスSは、既存のファンドに倣って「S」を付したものと考えられそうです。
また、そうであれば、最も古く設定された国内株式アクティブSに、「S」の秘密が隠されているのではないかとも考えられます。
国内株式アクティブSの交付目論見書
国内株式アクティブSの交付目論見書を確認すると、「ファンドの目的・特色」(3ページ目)には、以下のように記されています。
マクロ環境分析に基づき、TOPIXに対して、業種(Sector)配分、銘柄(Stock)選択の2段階において、ポートフォリオを乖離させることにより、2つのSからの長期的な超過収益の獲得を目指します。
アクティブSの名称はここに由来します。
私は一瞬、「S」の由来を発見したように錯覚しましたが、そうではありません。
なぜならば、日本株式インデックスSのようなインデックスファンドには、この2つのSが当てはまらないからです。
残念ながら、手がかりを得られないまま、振り出しに戻ってしまいました。
三井住友AMの沿革
次に、同社の沿革に何らかのヒントがあるのではないかと思い、当たってみました。
というのも、同社は合併により誕生した会社ですから、旧系列のファンド名称を変更する際、その識別のために「S」を付したのではないかと考えたのです。
沿革には、以下のように記されています。
- 2002年12月
- 三井生命グローバルアセットマネジメント・さくら投信投資顧問・三井住友海上アセットマネジメント・スミセイグローバル投信・住友ライフ・インベストメントの5社合併、三井住友アセットマネジメント(株)発足
5社の中で「S」を付しそうなのは、三井生命グローバルアセットマネジメントを除く4社です。これでは識別できそうにありません。
そもそも、合併が2002年12月であるのに対して、先に登場した外国株式インデックスSや外国株式インデックスSの設定日が2004年11月30日なのですから、設定時に旧系列を識別する必要性は、おそらくないでしょう。
この仮説も、残念ながら成り立たないようです。
同社へ問い合わせた結果と結論
他に考えられるのは、「S」が「SMAM」の頭文字だとの仮説ですが、これはあまりに安直ですし、説得力も乏しいでしょう。
いよいよ、考え得るものがなくなり、行き詰まってしまいましたので、最後の手段に出ました。
三井住友AMが問い合わせフォームでの意見・質問の受付を開始の記事の通り、同社ではネットからの問い合わせも対応しているため、利用してみました。
すると、驚きの回答が返ってきました。「S」に特段の意味はないそうで、同社内でファンドを整理・管理するために、記号を付しただけとのことです。
何とも拍子抜けしてしまうのですが、整理・管理の内部事情まで問い合わせるのは、さすがに気が引けますので、これをもって結論とします。
丁寧に回答くださった同社に御礼申し上げます。
(おまけ)「三井住友・DC日本債券インデックスファンドS」がない
ところで、「三井住友・DC日本債券インデックスファンドS」(本記事内での略称「日本債券インデックスS」)が存在しないのは、とても不思議に思えます。基本4資産の1つを欠いているからです。
その代わりとなっているのが、2002年1月4日付で設定された三井住友・日本債券インデックス・ファンドです。
なお、同ファンドは2015年6月30日付で、旧「三井住友・DC年金日本債券インデックスファンド」から名称変更しています。
調査ついでに、マザーファンドを確認してみました。
名称 | 本記事内の略称表記 | マザーファンド |
---|---|---|
三井住友・DC日本株式インデックスファンドS | 日本株式インデックスS | 国内株式インデックス・マザーファンド(B号) |
三井住友・DC外国株式インデックスファンドS | 外国株式インデックスS | 外国株式インデックス・マザーファンド |
三井住友・DC外国債券インデックスファンドS | 外国債券インデックスS | 外国債券パッシブ・マザーファンド |
三井住友・日本債券インデックス・ファンド | — | 国内債券(NOMURA-BPI)マザーファンド |
国内株式インデックス・マザーファンド(B号)の「B号」が気になって調べたところ、アクティブ・パッシブを問わずに「A号」から「E号」まで存在することが確認できました。
こちらも「S」と同様、整理・管理のために付したものと推測します。
さて、内外株式インデックスのマザーファンド名称が対になっているのであれば、内外債券インデックスのマザーファンド名称も対になるのではないか、すなわち「国内債券パッシブ・マザーファンド」が存在するのではないかと考えられます。
そこで、SMAM・グローバルバランスファンド(機動的資産配分型)の交付目論見書を参照してみると、投資対象に「国内債券パッシブ・マザーファンド」が含まれており、このマザーファンドは確かに実在するようです。
マザーファンドの設定日も確認してみました。
名称 | 設定日 |
---|---|
国内株式インデックス・マザーファンド(B号) | 2003年2月17日 |
外国株式インデックス・マザーファンド | 2003年5月19日 |
外国債券パッシブ・マザーファンド | 2003年12月18日 |
国内債券(NOMURA-BPI)マザーファンド | 2000年6月21日 |
国内債券パッシブ・マザーファンド | 2005年6月10日 |
国内債券(NOMURA-BPI)マザーファンドは、他のマザーファンドよりも早く設定されており、その設定日より、旧系列会社で保有していたものを引き継いでいることが分かります。
一方、国内債券パッシブ・マザーファンドは、他のアセットクラスよりも遅く設定されています。また、同マザーファンドを投資対象としているベビーファンドは、何故かバランスファンドばかりでした。
したがって、両者のベビーファンドは、前者がインデックスファンド、後者がバランスファンドという棲み分けをしているものと推測します。
なお、両マザーファンドの純資産総額を比べると、前者が1,154億円(2016年6月20日時点)、後者が2,965億円(2015年5月25日時点)となっています。
同等とも思えるマザーファンドを併存させる意図や意味は分かりませんが、後者のベビーファンドとして「日本債券インデックスS」が登場する余地は、一応ありそうです。
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