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「顧客本位の業務運営(フィデューシャリー・デューティー)に寄与する『定期受取りサービス』」を読む

分配金の行方

日興AMが2017年4月14日付で、週刊金融財政事情(きんざい)2017年2月20日号への寄稿文を公開しています。

ニュースルームによると、「顧客本位の業務運営(フィデューシャリー・デューティー)に寄与する『定期受取りサービス』」と題し、同社の大柳雄二氏が執筆しています。

本記事では、早速その内容を追ってみます。

ポスト・リタイアメント層への手当てが必要

本書では、富裕層を除くシニア世代を「ポスト・リタイアメント層」と称し、その特徴を説明しています。

  • 今もなお、他の層と比べて投資教育の機会がないか、不十分である。投資業界も、当該層の投資家の利益に寄与する商品・サービスを積極的に提供していない。
  • 毎月分配型ファンドを好んで選択する。しかし、それらの多くは単一資産を投資対象としており、分散投資が難しく、かつ毎月分配型のバランスファンドは本数が少ない。
  • 当該層の約4割は、分配金を有効活用(生活費への充当や再投資など)していない。つまり、分配金の額や頻度が、ニーズにマッチしていない。

そして、本書では、当該層のニーズを満たすために、「定期受取りサービス」が有効であると提言しています。

なお、定期受取りサービスには、SBI証券の「投資信託定期売却サービス」のような「定額定額受取り」とともに、「定期定口数受取り」も含めています。

私が感心したのは、業界のタブーを巧みに避けて、「毎月分配型ファンドは高コストだからダメだ」とは言っていないところです。

ともあれ、分配金がこれほどまでに有効活用されていないのは、大変に意外でした。

それならば、毎月分配型ファンドを選択しなければ良いのですが、不十分な投資教育や、金融機関の半ば強引なセールスが、判断ミスの原因となっているのでしょう。

いずれにせよ、投資業界がフィデューシャリー・デューティーを果たす上で、この提言は重要な意味を持つものだと、私は感じました。

定期受取りサービスのメリット・デメリット

毎月分配型ファンドと定期受取りサービスの違いを簡単に比較すると、以下の通りです。

項目毎月分配型定期受取り
サービス提供主体ファンド販売会社
分配金額・頻度運用会社が決定投資家が指定
分配結果基準価額の下落保有口数の減少
定期定口数受取り不可能可能

ちなみに、定期受取りサービスで定期定口数受取りが可能な点は、ドルコスト平均法による買付と同様、売付時期の分散を図れるため、当該層に限らず魅力的です。

さて、本書では、定期受取りサービスのメリット・デメリットを各々3点、以下の通り挙げています。

メリット

実践的な投資教育の推進
資産分散や時間分散といった基礎を実践しつつ、それに応じた提案が可能となる。
また、分配金に対する誤解やクレームが減り、ひいてはファンドの保有期間延長が期待できる。
取扱いファンドの本数を減らす効果
分配頻度・方針の違いにより、同一の運用で複数本のファンドを設定する必要がなくなる。
ポスト・リタイアメント層へのコアファンド提案
資産をバランス良く取り崩すために、コア資産としてバランスファンドを選択することも一考である。

デメリット

新たな提案フローの構築
販売会社において、定期受取りサービスの仕組みを提案できるよう、現場に周知する必要がある。
ただし、ロボ・アドバイザーとの相性は良いものと推測する。
システムオプションの追加
販売会社において、定期受取りサービスの仕組みを構築する必要がある。
営業担当者の業績評価方法の構築
預かり資産が増えていく資産形成層と異なり、ポスト・リタイアメント層は減っていくため、預かり資産残高に着目した従来の業績評価方法では、定期受取りサービスの提案が業績評価を下げる要因となり得る。
「顧客本位の業務運営」という観点で、業績評価方法を見直す余地がある。

実現へのハードルは高いが

メリットのうち2点は投資家(ポスト・リタイアメント層)に寄与するもの、1点は運用会社に寄与するものです。

一方、デメリットの3点はすべて、販売会社の負担となるものです。

著者が運用会社の立場であることも含め、ステークホルダーの利害を考えると、実現へのハードルは高いと言わざるを得ません。

とはいえ、運用会社が相次いでフィデューシャリー・デューティー宣言を発し、課題への取り組みを深化させているのに比べると、販売会社の動きは少々鈍く思えます。

特に、既存の仕組みを変えてでもフィデューシャリー・デューティーを果たすというような、アグレッシブな取り組みが少ないように、私は感じています。

しかし、定期受取りサービスと同等のサービスを提供している販売会社が実在するのですから、実現が不可能なわけではありません。

また、定期受取りサービスがフィデューシャリー・デューティーを果たす唯一の解というわけでもありません。

どのみち販売会社の取り組み次第となるわけですが、本書が運用会社から販売会社へと改善を促す構図になっている点は、今後の業界動向を見極める上でも注目に値すると、私は感じました。

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