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つみたてNISAと金融投資教育から金融庁の政策を考察する

読書のイメージ

我が国では、投資へのイメージが依然として良いとは言えませんし、そもそもお金の話さえタブー視される場面があります。

とはいえ、お金は、生活する上で切っても切り離せない存在です。日々の買い物も、映画鑑賞も、ちょっとした旅行も、お金がなければできません。

お金と上手に付き合うためには金融知識が欠かせませんが、これまで金融投資教育が我が国の教育カリキュラムに組み込まれることは、極めて稀でした。

たまたま大学で金融知識を自主的に学ぶことができた私としては、この現状を大変不幸であると感じています。

つみたてNISA制度に対する金融庁の意思

さて、最近の投資環境に目を向けてみると、金融庁は、2018年より開始予定のつみたてNISAの制度設計において、金融商品の要件を厳しく定めたり、金融機関毎の取り扱い商品数に上限を設けたりすることを検討しています。

金融庁の2017年6月付の資料においても、現行NISA制度の伸び悩みなどとともに、以下のように記載しています。

家計には、実践的な投資知識(積立・分散投資の有効性など)を身に付けてもらう必要。

金融投資教育を受けたことの無い者の割合は約7割。そのうち3分の2が、「そもそも投資の知識は不要」との考え。

⇒投資初心者を主な対象とした実践的な投資教育を促進。

ここで言う「実践的な投資教育」とはすなわち、実際に本制度を活用し、肌身で感じてもらうことでしょう。

つまり、先に挙げた制度設計上の制約は、我が国で大半を占める金融投資教育未受講層を、安全運転しかできない状態でつみたてNISAへ導くという、金融庁の意思が込められていると解釈できます。

つまり、本制度は一種の箱庭であり、金融庁が制度利用者を一定の範囲内にコントロールできる仕組みだというわけです。

踏み台

先の解釈が正しいという前提のもとで、私は、金融庁のこの方針に賛成です。

現在の学生に金融投資教育を受講させ、学ばせるのは、さほど難しいことではないでしょう。それに比べ、社会人に同じことをさせるのは、実務として非常に困難です。

すなわち、今更、金融投資教育の重要性と金融知識の普及を声高に叫んだところで、誰も耳を貸さないのです。

本制度を提供する金融機関が、そのような層に対してハイリスク商品を用意するのは不適切でしょうし、商品数が多すぎて選べない状況を作るのもまずいでしょう。

言い換えれば、つみたてNISAは投資の入口ですから、金融投資教育未受講層に優しくなければ意味がありません。

したがって、現行NISA制度を活用しているなど既に投資経験のある層にとっては、物足りなく感じる制度設計でなければならないのです。

やがて、つみたてNISAで投資知識を得て、諸々の制約に窮屈さを感じるようになれば、それとは別に課税口座でも投資を始めれば良いでしょう。

金融庁の狙いは、単に本制度の枠内で投資を普及させようとしているのではなく、つみたてNISAを踏み台として、本制度の活用者を課税口座にまで誘おうとしているものと、私は解釈しています。

金融投資教育は実践的であるべき

机上での金融投資教育が必要不可欠であるのは、言うまでもありません。

特に、長期分散投資によるリスクの低減とリターンの改善は、投資理論の基礎中の基礎であり、これを知らずに投資を始めるのは、あまりに危険すぎます。

とはいえ、机上ですべてを学べるわけではありません。ひとたび投資を始めれば、相場の日常的な波はもちろん、暴騰・暴落によって資産の急増・急減が起こり、精神的に多大なストレスがかかるからです。

このことを机上で学んだとしても、直感的に分かるわけがありません。体育の授業を机上で済ませるようなものです。

そうではなく、相場の波を実際に体験し、少しずつ耐性をつけることのほうがむしろ重要でしょう。

したがって、私は、金融投資教育が実践を重視する学問であるものと考えています。

踏み絵

以上のことから、本制度は金融機関にとって、ほとんど旨みのないものであることは明らかです。本制度が求める低コストの金融商品とは、裏を返せば、金融機関に実入りの少ない金融商品だからです。

金融庁は金融機関に対して、フィデューシャリー・デューティー(受託者責任)を全うするよう指導していますが、私は本制度をその文脈で語ろうとすることに、若干の違和感を覚えています。金融機関がそもそも本制度を受託しなければ、責任を果たす必要もないからです。

さて、現在、対面証券や銀行よりもネット証券のほうが、本制度に興味関心が高いと言われています。前者は旨みの少ないものに関わりたくないという意志表示の表れでしょうが、後者はなぜ積極的なのでしょうか。

私は先述の通り、つみたてNISAから課税口座への流入を期待しているのではないかと考えています。それが戦略として正しいでしょうし、投資家側もステップアップすることになります。

目先の利益にばかり囚われていると、足元をすくわれます。高コスト商品の回転売買から脱却し、先を見通す力が金融機関にあるか否か、金融庁は、踏み絵を踏ませて判断しようとしているのかもしれません。

金融庁には、我が国の金融機関がグローバル金融の世界で対等に戦えるよう導く役割が期待されています。

このように見ていくと、実は金融機関よりも「お役所」である金融庁のほうが、先々を見通しているのかもしれません。

金融再編を契機として歯車が大きく動き出した我が国の金融政策も未だ道半ばですが、金融機関が金融庁の深慮に支えられ続けるのか、あるいは自立できるのか、私は静かに見守りたいと思います。

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