どうすればETFがもっと活用されるか
読者の皆様は、ETFに対してどのようなイメージをお持ちでしょうか。
一昔前まで、ETFは(非上場の)インデックスファンドと比べてコスト面で圧倒的に有利でした。しかし、今は超低コストインデックスファンドの隆盛により、すっかり影に隠れてしまいました。
殊に積立投資においては、ドルコスト平均法による定時定額買付が基本となりますが、買付時期と買付金額を予め指定しておけば良いインデックスファンドに比べて、株数と株価の両方を睨みながら毎回指値を入れなければならないETFは、決して使い勝手の良い商品だとは言えません。
今後どうすれば個人投資家がETFに魅力を感じ、取引が活発になるのか、私はこの半年ほど答えが出ないまま、ぼんやり考え続けていました。
そしてようやく、その答えとなりそうなものを見つけました。キーワードは「毎月分配型」です。
「悪い」投資信託から「良い」ETFへ
毎月分配型の投資信託と言えば、金融機関が販売手数料稼ぎのために回転売買を勧め、高額な信託報酬をむしり取り、タコ足分配するなど、金融庁さえもその商品性に疑問を呈しています。
しかし、仮に売買手数料も信託報酬も低コストで、元本を取り崩さない毎月分配型の商品が出たならば、どうなるでしょうか。
損得は別として、定期的に分配金を得たいというニーズは確実にありますから、そこまで目の敵にされることはないでしょう。
そして、ETFならば、これらを実現できそうなのです。
まず、ETFは収益の全額を投資家に分配しなければならないと法律で定められており、毎月分配型との相性は抜群に良いと言えます。
次に、上場商品として適時開示を義務づけられており、特にアクティブファンドに欠けがちな透明性が確保されている点を挙げられます。
最後に、低廉な売買手数料で取引でき、低信託報酬の商品設計が可能な点は、言うまでもなくETFのメリットでしょう。
さて、問題となるのは、毎月分配可能な商品を現実的に設計できるか否かです。ここでは、主に国内のアセットクラスについて考えてみます。
国内株式
東証1部上場企業の決算期とIFRSの記事の通り、我が国では3月決算を採用している企業が圧倒的に多く、12月決算がそれに続きます。
したがって、配当金収益が特定の月に大きく偏るため、毎月分配など到底不可能です。
収益の少ない月のために内部留保や借入を行う方法も考えられますが、ETFでは収益の全額を分配しなければならず、タコ足分配も許されないため、両方とも無理です。
国内債券
毎月分配型の国内債券ファンドとして真っ先に思い浮かぶのは、MMFです。毎月分配ニーズに対してこれまでMMFが果たした役割は、非常に大きかったと言えます。
ただ、MMFが絶滅したことからも分かる通り、現在の超低金利下において分配原資を確保するのは極めて難しいと言えます。
しかし、いずれ金利が上昇した折にはMMFが復活するでしょうし、ゆくゆくは超短期債インデックスの開発、そして国内債券ETFの初組成が実現するかもしれません。
国内REIT
国内REITの毎月分配型ETFは、実現可能性が高いと言えます。山谷あれど、決算月が分散しているからです。
2017年10月7日時点におけるJ-REIT計59銘柄の決算月を見てみると、以下の通りです。なお、例えば3月・9月決算の銘柄については、3月と9月に各々カウントしています。
決算月 | 銘柄数 |
---|---|
1月 | 13 |
2月 | 14 |
3月 | 6 |
4月 | 10 |
5月 | 7 |
6月 | 8 |
7月 | 13 |
8月 | 14 |
9月 | 6 |
10月 | 10 |
11月 | 7 |
12月 | 9 |
また、かなりの変則球となりますが、決算期の異なる3銘柄のJ-REIT ETFを組み合わせると、同じことを実現できます。
その他
日興AMの上場インデックスファンド海外債券(Citi WGBI)毎月分配型(証券コード1677、略称上場外債)は、毎月分配型のETFです。
投資対象が海外資産のため為替の影響を受けるものの、過去の分配履歴を見る限り、安定性は問題なさそうです。
真に訴求力のある商品開発を
国を挙げて積立投資に力を入れている昨今、それと相性の悪いETFは、指値取引できる点を訴求しても、もはや個人投資家には響きません。
もっとも、機関投資家は、必要に応じて現物バスケットと受益権を交換するなどして、今後も大いにETFを活用することでしょう。
一方、ETFが個人投資家の資産形成に資する商品として生き残るためには、何らかの手段により、超低コストインデックスファンドとの棲み分けが必要不可欠となります。
そうなると、今回考察したように、ETFとインデックスファンドの商品性の違いから活路を見出そうとするのが自然な成り行きだと言えます。
毎月分配を積極的にアピールするETFが続々と登場すれば、少なくとも潮目を変えられそうだと、私は思った次第です。
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