お金は寝かせて増やしなさい
水瀬ケンイチ氏の「お金は寝かせて増やしなさい」を読了しました。
同氏は言わずもがな、本ブログの相互リンク先の梅屋敷商店街のランダム・ウォーカーを運営している著名人であり、インデックス投資に造詣が深いことで広く知られています。
私はほとんど読書の習慣がありませんが、折しも家族が投資を始めたことから、本書をぜひ読みたいと思って発売前に予約注文していました。
手許に届くのを楽しみに待っていたところ、著者よりご連絡いただき、ありがたいことに献本という形でご恵贈にあずかれることになりました。そのような経緯で私の手許には2冊届き、読む喜びも倍増です。なお、2冊のうち1冊は、家族が職場でじっくり読みたいということだったので、そちらに託しました。
さて、本書は投資初心者でも概要を理解できるよう平易に書かれており、すらすらと読み進められますが、所々で登場する難しいポイントについてはページを割いて手厚く説明されており、投資経験者であっても必読だと言えるでしょう。
とりわけ私が感心したのは、読者の投資経験や理解度に応じて、様々な切り口で著者の知見を学べるように構成されている点です。
例えば、初心者にはインデックス投資のメリットや運用プロセスに関する解説が強く印象に残るでしょうし、経験者には「寝かせて増やす」ことの難しさや15年実践記などが心に響くでしょう。
したがって、投資経験を積んでいく過程で本書を何度再読したとしても、毎回新しい発見があろうと思います。オーソドックスだからこそ奥深く、そこに本書の魅力があるのです。
実践の難しいポイント
ここでは、私の経験をもとに、実践の難しいポイントと克服方法について簡単に触れたいと思います。
「腹落ち」
本書の中で最も共感したキーワードは「腹落ち」です。151ページには、次のように書かれています。
インデックス投資の本質部分が腹に落ちていないと、人は少しの損失であわてふためき、怖くなってすぐに売却してしまい、結局はインデックス投資を継続できなくなってしまうことを、リーマンショックのときに嫌というほど実感しました。
私も投資経験が10年を超え、著者と同様、リーマンショックの大暴落を経験しています。当時は未だ個別株の売買に勤しんでいたため、上記の通りあわてふためき、インデックス投資はおろか、投資そのものが継続できなくなる一歩手前まで行き着きました。
今思い返してみると、とりあえず個別株の売買を始めたは良いものの、それが腹落ちしていたわけではなく、何となく儲かりそうだという程度の認識でした。
あやふやな心構えにあやふやな売買を重ねたところで、うまく行くはずがありません。それに気づいて観念し、紆余曲折を経て世界標準のスタンダードな投資法
へと舵を切りました。
当時もし、個別株の売買に腹落ちしていたならば、納得ずくの上でさらなる泥沼にはまり、再起不能となっていたかもしれません。つまり、正しく腹落ちしていなければ、投資は継続できないのです。
個別株の売買は、その良し悪しは別として、結局のところ私に見合った投資法ではありませんでした。
腹落ちをあえて言い換えれば、それは信念だと思います。自分をどこまで信じ切れるかというのも、実は非常に重要なポイントだと感じています。
そのことを理解した上で、本書と若干異なるアプローチを採るのも良いでしょう。例えば、外国債券の扱いについて、私と著者とでは考え方が少し異なりますが、基礎を押さえつつ腹落ちしているのであれば何の問題もありません。
自分なりにアレンジして投資を楽しむも良し、自動積立に任せて忘却するも良し、人それぞれのアプローチがあって良いのだと、本書を読んで改めて思った次第です。
「寝かせて」
本書のタイトルにもある「寝かせて」は、実は投資家泣かせの難題だとも言えます。経験者であれば、寝かせずに動かしたくなる衝動に幾度となく駆られたことがあるでしょう。
投資と日常生活を綺麗に線引きできる人ならば容易く寝かせられるのですが、私にはできませんでした。
そのため、どうにかして寝かしつけようと思案した結果、投資方針書を策定し、腹落ちするまで何度も改訂した上で、その方針通りに投資するという方法を採ることにしました。
先述の通り腹落ちしていたとしても、いざ暴落の局面を迎えると、目先の恐怖に任せて方針を変えてしまいやすいため、投資方針書は苦しい時こそ役に立つと、私は実感しています。
もし、寝かせられずに苦労したり、孤独感に苛まれたりするならば、全国で催されているコツコツ投資家がコツコツ集まる夕べの場などでアドバイスを求めてみるのも良いでしょう。私はそれで何度も救われました。
拙作アセットツールも登場しています
194ページ、新しいインデックスファンドが登場したら乗り換えるべきか?
の項において、本ブログのアセットツールを紹介くださっており、作者として感激の極みです。
本項で使用している乗り換えコストチェッカーを含め、アセットツールはすべて無料で利用できますので、読者の皆様のお役立ちツールとしてご活用いただければ幸いです。
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