休眠預金(休眠口座)の取り扱いが変わるのをご存知ですか
読者の皆様は、金融庁や内閣府、銀行などが現在、「休眠預金」について案内・周知しているのをご存知でしょうか。
休眠預金とは、2009年1月1日以降の最後の取引より10年以上、まったく取引がない預金口座にある預金を指し、2019年1月1日以降に発生する可能性があります。
詳細については、以下をご参照ください。
- 長い間、お取引のない預金等はありませんか?(金融庁)
- 民間公益活動促進のための休眠預金等活用(内閣府)
従来との違い
これまで、長期にわたって取引のない口座については、各銀行の規定などにより、口座凍結や払い戻しなどを個別に行っていました。
これが、2018年1月1日付で施行される休眠預金等活用法(民間公益活動を促進するための休眠預金等に係る資金の活用に関する法律)によって、一律に規定されることになります。
本法によると、休眠預金は預金保険機構へ移管し、民間の公益団体に対して貸付・助成するとしています。すなわち、休眠預金は、預金者のものではなくなります。
とはいえ、預金保険機構が丸儲けとなるわけではありません。移管された休眠預金は、預金者が無制限にいつでも払い戻せます。
例えば、2019年1月1日に発生した休眠預金は、2020年にでも2030年にでも、所定の手続きを踏めば全額を引き出せ、預金者の手許に戻ります。
以上をまとめると、休眠預金の所有権は預金者から預金保険機構へと移管されますが、その払い戻し権利は預金者にあります。
したがって、預金者から見れば従来とほぼ同様の取り扱いが行われ、休眠預金が勝手に消滅するようなことはありません。
休眠預金を預金保険機構が運用するための制度
本法のスキームについて分かりやすく言い換えると、「預金保険機構が預金者からの払い戻し請求を受けるまでの間、代わって休眠預金を運用するもの」となります。
もっとも、「運用」とは先述の通り公益活動への貸付・助成を指しており、収益の獲得を目的とする資産運用とは性格を異にしています。
休眠預金は現在、払い戻し額を差し引いても年間700億円規模となっており、その莫大なお金が活用されることなく銀行に滞留しているという、大変もったいない状態です。
本法の趣旨は、預金者が不利益を被ることなく、滞留しているお金を世のために使うというものであり、私はなかなか良いところに目を付けたなと思っています。
ただ、将来的に休眠預金の規模がさらに膨れ上がると、公益活動だけでは消化し切れないなどの理由で、一部を資産運用へ回すようになるかもしれません(念のため、現在の本法ではできません)。
個人的には、今後そうしても良いのではないかと感じています。今でも休眠預金は銀行が個別に運用しているわけですから、預金保険機構がまとめて運用したとしても、我が国の金融システム全体で捉えれば何も変わらないと考えられるからです。
また、利権まみれで怪しい公益団体にまで資金提供するよりは、資産運用のほうがはるかに透明性が高いとも言えるでしょう。
今後も引き続き、休眠預金の動向に注目していきたいと思っています。
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