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金融ジェロントロジー(金融老年学)から「出口戦略」を考える

「金融ジェロントロジーにおける資産運用に関する調査」結果についてのニュースリリース

野村AMが2018年1月26日付で、野村資本市場研究所との連名で興味深い調査結果を開示しています。

「金融ジェロントロジーにおける資産運用に関する調査」結果についてと題するレポートで、高齢世代の投資における課題を簡潔にまとめています。

金融ジェロントロジー(フィナンシャル・ジェロントロジー、金融老年学)とは何かについて、本レポートでは以下のように説明しています。

ジェロントロジー(老年学、加齢学)とは、人間の老齢化現象を、医学、生物学、工学、経済学、社会学、心理学、邦楽など多面的、学術的アプローチにより、個人の長寿化と社会の高齢化に適応した社会システムの構築、社会価値観の創造などを追求する学問。

金融ジェロントロジーは、高齢者の経済活動、資産選択など、長寿・加齢によって発生する経済や金融取引の課題を、経済学を中心に関連する研究分野と連携して、分析研究し、課題の解決策を見つけ出す新しい研究領域である。

このうち、本レポートが対象としているのは、個人の長寿化と社会の超高齢化が資産運用にもたらす影響についてです。

主な調査結果から見えてくる課題

本記事では、私なりに本レポートの内容を解釈し、考察してみたいと思います。

認知機能の低下と投資行動

高齢世代は、身体機能の低下は自覚しやすいものの、認知機能の低下は自覚しにくいようです。

認知機能の低下を自覚した際の行動としては、運用を取り止めて預金へ移行すると回答した割合が40%、事前に運用方針を家族と決めて共有すると回答した割合が32%に達しており、中止と継続の比率がおおよそ6:4となっています。

一方、どうすべきか分からないとの回答も、60代では41%に達しており、老いることへの意識や備えの差が如実に表れる結果となっています。

金融資産の枯渇に対する意識の低さ

60代は、平均寿命を超えて生きる可能性を低く見積もっており、「長い老後生活を想像できていない」ことを懸念しています。

要するに、「長生きのリスク」への備えが不十分で、金融資産が枯渇しそうだということです。

これに対して、今後、医療や介護の費用を勘案しながら計画的に取り崩すという資産管理サービスへのニーズが高まると予測しています。

ただし、そのようなニーズは、必ずしも金融リテラシーの低さから来るものとは限りません。認知症の罹患などによって金融資産を管理できなくなることへの不安も相当なものでしょうから、たとえ高コストであっても、資産管理サービス自体を否定するのは正しくないと考えられます。

金融資産の取り崩しは年率3%

金融資産総額の平均は2,444万円、取り崩しの年額は平均71万円(年率3%)、取り崩し可能年数は平均34年などとなっています。

実際にこれら数値の通りに事が進めば、平均寿命までの生活をカバーできるはずですが、総じて取り崩しに対する計画性は乏しく、甘い現実認識が浮き彫りになっています。

したがって、実際には、計画的な取り崩しに加えて、運用の継続による金融資産の維持も両立しなければならないケースが多々ありそうです。

金融資産枯渇への対応

金融資産が枯渇してしまった場合の対応として、支出の削減を回答した割合が50%を超えています。一方、収入の増加を目指すとの回答は10%にも満たず、「入りを図る」よりも「出ずるを制す」のほうに意識を取られがちのようです。

一方、枯渇を防ぐための手段としては、元本を減らさないことを挙げる回答が極めて多く、目的と手段が合致していないようにも見えます。

やはり、高齢世代であっても運用の継続は視野に入れて検討すべきであるように感じます。

金融商品・サービスへのニーズ

高齢世代は概ね、年代を問わず様々な金融商品・サービスに関心を持っているようです。

その中には、ターゲットデート型・高分配型ファンドやファンドラップなどの高コスト商品・サービスも当然に含まれています。

計画的な取り崩しへのニーズに応える金融商品・サービスとなると、現状はおしなべて高コストなものばかりですから、このような結果となるのは致し方ないのかもしれません。

とはいえ、インデックスファンドやETFなどに関心を持つ層も決して少なくなく、コスト意識には大きな開きがあるようです。

老いることへの不安が、低コスト・セルフサービスと高コスト・フルサービスの間を行ったり来たりしているようにも見えます。

認知機能に問題のないうちは前者、不安になってきたら後者という使い分けをできるのが最善でしょうから、将来、定期的な認知機能検査の結果に応じて資産管理サービスのサービスレベルを変えるというビジネスモデルが流行ったりするかもしれません。

「出口戦略」を考える

私を含め、現役世代の考える出口戦略は、老後に必要な金融資産を見積もって積み立て、長生きのリスクを考慮しつつ計画的に取り崩すことを主眼としています。

一方、高齢世代の考えている出口戦略は、金融資産を自ら管理できるか否かによって、利用すべき金融商品・サービスを選ぶということだと、私は本レポートから感じ取りました。

高齢世代は、現役世代のようなロジカルさに乏しいかもしれません。しかし、ロジカルさだけで老後に備えられるという考え方は、私は正しくないと思っています。

金融資産の充実度合いや金融リテラシーの高低は、認知機能の良し悪しとは無関係です。そのため、出口戦略を立てる上では、ロジカルさが必要なのと同様に、老いて何もできなくなるリスクへの考慮も必要だと言えるでしょう。

個々人の置かれる状況によって最適解は自ずと変わりますから、時と場合によっては、相対的に高コストな金融商品・サービスであっても、人生を全うするためには積極的に選択しなければならないかもしれません。

したがって、端から結論ありきで1つの出口しか見えていないというのは、非常にリスキーです。

007の初代Qが最後に残した台詞は、敵に弱みを見せるな。常に逃げ道を作っておけ。(Never let them see you bleed. Always have escape plan.)というものでした。

「敵」が老いで「逃げ道」が出口だとすると、やはり双方欠けることなく、かつバランス良く考えておかなければならないのだと、私は重ね合わせた次第です。

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