アクティブファンドのフィデューシャリー・デューティーは商品性か継続性か
明治安田AMが2018年6月22日付で、「明治安田ジャパン・セレクト」の名称を冠するアクティブファンド2本の繰上償還予定を発表しています。
同社のファンドに関する公告によると、対象ファンドは以下の通りです。
- 明治安田ジャパン・セレクト(愛称萌芽)
- 明治安田ジャパン・セレクト(3カ月決算型)(愛称厳選大型)
いずれも、我が国の大型株を中心に25銘柄程度を厳選し、「有望業種の選定」と「有望銘柄の選択」の2要素を組み合わせ、中長期での絶対収益の確保を目指すアクティブファンドです。
両者の2018年6月25日付の純資産総額は、3.43億円・6.74億円と僅少であるものの、繰上償還の直接の要因は、別のところにありました。
投資助言会社の廃業
本ファンドの運用にあたっては、大型株に精通した独自の運用スタイルを有するタンゴ・インベストメント・ブレインズ社の投資助言を受けています。
ところが、タンゴ・インベストメント・ブレインズ社は、2018年11月までに会社を解散することが決定し、助言を受けられなくなる事態となりました。
明治安田AMは、ボトムアップ・アプローチによる運用手法を基本としているため、同社内で本ファンドの運用スタイルを継承するのは不可能だと判断したとのことです。
商品性の継続か償還か
アクティブファンドには、独自の運用スタイルを貫くものが多数ありますが、もしファンドの運用スタイルを変更せざるを得ない場合、運用を継続するか償還するかの判断が必要となります。
例えば、国内株式アクティブファンドとして代表的だった以下の2ファンドは、運用の継続を選択し、内外株式アクティブファンドへの転換を図っています。
- さわかみファンドは、ファンドマネージャーの交代により運用スタイルが激変したり、突如として海外株式の組み入れを開始したりしています。
- ひふみ投信・ひふみプラス・ひふみ年金のマザーファンドも、以前より予告していたとはいえ、海外株式の組み入れを開始し、その比率が徐々に上がっています。
商品性の「変質」が受益者に受け入れられるか否かは、そのファンドの運用状況によって変わるかもしれません。
実際、前者はパフォーマンスが顕著に低下したため不興を買っていますが、後者は徹底した銘柄選定が(今のところ)奏功し、評価を高めています。
償還が筋ではないか
一般論として、アクティブファンドの商品性を継続できないのならば、償還するのが筋ではないでしょうか。
これは、商品性の「変質」に納得できない受益者が解約すれば良いという単純な問題ではなく、フィデューシャリー・デューティーの根幹に関わる問題だと、私は考えるからです。
例えば、信託報酬率は、銘柄選定に必要な経費や投資助言を受けるための費用などを基に算定しますから、運用スタイルの変更に伴い見直されるべきです。
また、既存の運用資産を組み替える際の売買コストは、既存の受益者の負担となりますから、同意を得るための書面決議を経るべきでしょう。
しかし、上記2ファンドはもとより、このような措置を取ったアクティブファンドの事例は、寡聞にして知りません。
中身が変わったのに表面上は何も変わらないというのは、見方を変えれば受益者を欺いていることにもなりかねません。
そのような意味で、今回の明治安田AMの判断は賢明であると、私は思っています。
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